公的介護保険と民間介護保険:介護に備える賢い保険の選び方

はじめに

前回の記事では、介護にかかる費用の全体像について解説しました。介護費用は決して少なくないため、計画的な準備が不可欠です。その準備の一つとして「保険」が挙げられますが、公的な介護保険と民間の介護保険、それぞれどのような役割があり、どのように活用すべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、公的介護保険制度の概要と、民間の介護保険の必要性や選び方について、介護に備えるという視点から詳しく解説します。

公的介護保険制度の概要

公的介護保険制度は、介護が必要となった高齢者やその家族を社会全体で支えることを目的とした社会保険制度です[1]。40歳以上の国民が加入を義務付けられており、保険料を納めることで、介護が必要になった際に介護サービスを原則1割(所得に応じて2割または3割)の自己負担で利用できます[2]。

サービス利用の対象者

•第1号被保険者(65歳以上): 要介護認定で「要支援」または「要介護」と判定されれば、原因を問わず介護サービスを利用できます[3]。

•第2号被保険者(40歳~64歳の医療保険加入者): 介護保険法で定められた16種類の特定疾病(末期がん、関節リウマチなど)が原因で要介護状態になった場合に限り、介護サービスを利用できます[4]。

公的介護保険で利用できるサービス

公的介護保険では、以下のような多岐にわたるサービスが提供されます[5]。

•居宅サービス: 訪問介護、訪問看護、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)、福祉用具のレンタル・購入費の支給、住宅改修費の支給など。

•施設サービス: 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などへの入所。

これらのサービスを利用することで、介護者の負担軽減や、被介護者の自立した生活の維持が図られます。

民間介護保険の必要性と役割

公的介護保険は非常に手厚い制度ですが、全ての費用をカバーできるわけではありません。例えば、以下のような費用は公的介護保険の対象外となります。

•自己負担割合分: 介護サービス費の1割~3割の自己負担分。

•介護保険の支給限度額を超えたサービス費用。

•食費や居住費: 施設入所時の食費や居住費の一部。

•おむつ代や日用品費: 在宅・施設問わず、日常生活で必要となる消耗品費。

•交通費、理美容代、レクリエーション費用など。

これらの公的介護保険でカバーしきれない費用を補うために検討されるのが、民間介護保険です[6]。

民間介護保険のメリット・デメリット

項目メリットデメリット
メリット・公的介護保険の対象外費用をカバーできる・保険料の負担が発生する
・受け取った保険金の使途が自由・公的介護保険の認定と異なる場合がある
・介護期間が長期化した場合の経済的リスク軽減・早期に解約すると元本割れのリスクがある

民間介護保険から受け取った保険金は、公的介護保険では賄えない費用(例:リハビリ費用、おむつ代、施設入所後の食事代など)に充てることができ、使途が自由である点が大きな特徴です[6]。これにより、介護の選択肢が広がり、より質の高い介護サービスを受けられる可能性が高まります。

一方で、保険料の負担が発生することや、公的介護保険の要介護認定とは別に、保険会社独自の基準で給付条件が定められている場合がある点には注意が必要です。

民間介護保険が必要な人

以下のような方は、民間介護保険の必要性が高いと考えられます[7]。

•貯蓄が少ない、または将来的な収入に不安がある方

•家族に経済的負担をかけたくないと考えている方

•公的介護保険ではカバーできない、より手厚い介護サービスを希望する方

•介護期間が長期化した場合の経済的リスクに備えたい方

賢い保険の選び方

介護に備える保険を選ぶ際は、以下のポイントを考慮しましょう。

1.公的介護保険の理解: まずは公的介護保険でどのようなサービスが受けられ、自己負担がどの程度になるのかを正確に把握することが重要です。

2.自己資金の確認: 貯蓄や年金など、ご自身の自己資金でどれくらいの介護費用を賄えるのかを確認します。

3.不足分の把握: 公的介護保険と自己資金で不足する部分を明確にし、その不足分を補うために民間介護保険が必要かどうかを検討します。

4.保障内容と保険料のバランス: 民間介護保険を選ぶ際は、保障内容(一時金、年金形式など)と保険料のバランスを考慮し、無理なく続けられるものを選びましょう。

まとめ

公的介護保険は、介護を社会全体で支えるための重要な制度であり、多くの介護サービスを少ない自己負担で利用できます。しかし、全ての費用をカバーできるわけではないため、不足する部分を補うために民間介護保険が有効な選択肢となります。

ご自身の経済状況や将来の介護に対する考え方を踏まえ、公的介護保険と民間介護保険を賢く組み合わせることで、安心して介護に備えることができるでしょう。

参考文献

[1] 厚生労働省. 「介護保険制度の概要」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html [2] みんなの介護. 「【2025年最新版】介護保険制度とは?仕組みや保険料をわかり」. https://www.minnanokaigo.com/guide/care-insurance/ [3] 生命保険文化センター. 「公的介護保険で受けられるサービスの内容は?」. https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1110.html [4] サガシキ. 「介護保険の適用範囲とは?知るべき4つのポイント」. https://www.sagasix.jp/knowledge/hoken/scope/ [5] みんなの介護. 「【種類一覧表あり】介護保険サービスとは?内容や自己負担額」. https://www.minnanokaigo.com/guide/care-insurance/service/ [6] 保険の窓口. 「民間の介護保険の必要性やメリット・デメリット、選び方を徹底解説」. https://www.hokennomadoguchi.com/columns/seimei/kaigo/merit-demerit/ [7] i-世代. 「民間介護保険は必要ない?メリット・デメリットや必要性が高い人」. https://www.i-sedai.com/contents/money/M0123.html

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