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  • 介護の悩みを一人で抱え込まない!頼れる相談窓口とサポート体制

    はじめに

    これまでの連載で、介護にかかる費用、保険の活用、節約術、介護離職対策、資産運用、在宅・施設介護の比較、そして認知症介護の知識まで、介護に関する多岐にわたる情報を提供してきました。介護は、多くの人にとって初めての経験であり、不安や疑問、そして精神的・身体的な負担が伴うものです。しかし、その悩みを一人で抱え込む必要はありません。

    本記事では、介護の様々な段階で頼りになる相談窓口と、利用できるサポート体制について詳しく解説します。適切な相談先にアクセスすることで、介護の負担を軽減し、より安心して介護生活を送るための道筋を見つけることができるでしょう。

    介護の相談窓口:どこに相談すればいい?

    介護に関する悩みは多岐にわたるため、相談内容に応じて適切な窓口を選ぶことが重要です。主な相談窓口は以下の通りです。

    1. 地域包括支援センター

    地域包括支援センターは、高齢者の総合的な相談窓口であり、介護に関する最初の相談先として最も重要です[1]。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、無料で様々な相談に応じてくれます。

    •役割: 総合相談支援、介護予防ケアマネジメント、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメントなど[2]。

    •相談内容: 介護保険制度の利用方法、介護予防、健康相談、虐待の相談、成年後見制度の案内など、高齢者の生活全般に関する相談が可能です[3]。

    •利用方法: お住まいの市区町村に設置されており、誰でも利用できます。まずは電話で問い合わせてみましょう。

    2. 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)

    居宅介護支援事業所には、**ケアマネジャー(介護支援専門員)**が在籍しており、要介護認定を受けた方が介護サービスを利用するためのケアプラン作成を支援してくれます[4]。

    •役割: ケアプランの作成、介護サービス事業者との連絡調整、介護保険サービスの利用に関する相談など[5]。

    •相談内容: どのような介護サービスが利用できるか、サービス事業者の選び方、介護保険の利用料金、家族の介護負担に関する相談など[6]。

    •利用方法: 要介護認定を受けた後、地域包括支援センターや市区町村の窓口で紹介を受けるか、自分で事業所を探して契約します。ケアプラン作成費用は全額介護保険から支払われるため、自己負担はありません。

    3. 市区町村の介護保険担当窓口

    介護保険の申請手続きや、介護保険料に関する問い合わせなど、制度全般に関する相談ができます。地域包括支援センターと連携している場合も多いです。

    4. 医療機関の相談室(医療ソーシャルワーカー)

    病院内にある相談室では、**医療ソーシャルワーカー(MSW)**が、病気や怪我に伴う生活上の問題、医療費の相談、退院後の生活支援、介護サービスへの移行などについて相談に応じてくれます。

    5. 民間の介護相談サービス・紹介センター

    有料老人ホームの紹介センターや、民間の介護相談サービスなど、専門的な情報提供や施設選びのサポートをしてくれる機関もあります。特定のニーズがある場合に有効です。

    6. 家族会・患者会

    同じような介護の悩みを持つ家族同士が集まり、情報交換や精神的な支え合いを行う場です。特に認知症介護など、特定の疾患の介護においては、経験者からのアドバイスが大きな助けとなることがあります。

    介護のサポート体制を構築するポイント

    1. 早期の情報収集と相談

    親の介護が始まる前、あるいは「もしかしたら」と感じた段階で、早めに情報収集を始め、地域包括支援センターなどの専門機関に相談することが重要です。これにより、適切なタイミングで必要なサービスに繋がることができます。

    2. 家族内での役割分担と情報共有

    前回の記事でも触れたように、家族間で介護の役割分担を明確にし、定期的に情報共有を行うことが、介護者の負担軽減につながります。一人に負担が集中しないよう、協力体制を築きましょう。

    3. 介護サービスの上手な活用

    訪問介護、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)など、様々な介護サービスを上手に組み合わせることで、介護者の休息時間を確保し、介護疲れを防ぐことができます。特にショートステイは、介護者のレスパイト(休息)ケアとして有効です。

    4. 介護者の心身の健康維持

    介護は長期にわたるマラソンのようなものです。介護者自身の心身の健康を維持することが何よりも重要です。趣味の時間を持つ、友人との交流を続ける、地域の介護者サロンに参加するなど、リフレッシュできる機会を意識的に作りましょう。

    まとめ

    介護は、一人で抱え込むにはあまりにも大きな課題です。しかし、地域には様々な相談窓口やサポート体制が整備されており、それらを積極的に活用することで、介護の負担を大きく軽減し、より質の高い介護生活を送ることが可能になります。

    介護の悩みに直面したら、まずは地域包括支援センターに連絡してみましょう。専門家のアドバイスを受けながら、ご自身とご家族にとって最適な介護の形を見つけてください。この連載が、皆様の介護生活の一助となれば幸いです。

    参考文献

    [1] みんなの介護. 「【はじめての介護】相談はどこにすればいい?悩んだときの窓口」. https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/care-manager/no132/ [2] 厚生労働省. 「地域包括支援センターの業務」. https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link2.pdf [3] 埼玉県. 「地域包括支援センター」. https://www.pref.saitama.lg.jp/a0609/houkatsu.html [4] みんなの介護. 「ケアマネジャーに相談できること総まとめ!効果的な相談方法」. https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/care-manager/no129/ [5] シニアホームの窓口. 「老人ホーム・介護施設に入居したいとき頼れる相談窓口6つを解説」. https://www.seniorhome-mado.com/news/consultation/ [6] YC OTA. 「ケアマネジャーに相談できることとは?相談内容や上手な」. https://www.ycota.jp/point/28838

  • 認知症介護とお金の話:費用と家族の負担を軽減する知識

    はじめに

    これまでの連載では、介護費用の全体像から始まり、保険の活用、費用節約術、介護の選択肢、そして事前の準備に至るまで、介護にまつわる「お金」と「備え」について幅広く解説してきました。最終回となる本記事では、特に精神的・経済的負担が大きくなりがちな「認知症介護」に焦点を当てます。

    認知症の介護は、予測不能な症状や長期化するケアにより、家族に大きな影響を及ぼします。本記事では、認知症介護にかかる費用、利用できる施設、そして家族の負担を軽減するための具体的な知識と支援策について、これまでの記事の内容を総括しつつ、詳しく解説します。

    認知症介護にかかる費用

    認知症の介護費用は、在宅介護か施設介護か、また要介護度によって大きく異なります。

    •在宅介護の場合: 月々の平均費用は約4.8万円とされています[1]。これには、介護保険サービスの自己負担分、医療費、おむつ代などの日用品費が含まれます。しかし、症状の進行に伴い、訪問介護の頻度が増えたり、デイサービスの利用が必要になったりすると、費用はさらに増加します。

    •施設介護の場合: 月々の平均費用は約12.2万円です[1]。施設の種類によって費用は大きく異なり、公的な特別養護老人ホームは比較的安価ですが、民間の有料老人ホームやグループホームは高額になる傾向があります。入居一時金として数百万円が必要な場合もあります[2]。

    これらに加え、住宅改修や介護ベッドの購入などの初期費用として、平均で約74万円がかかるというデータもあります[3]。

    認知症の方が入居できる施設

    認知症の症状が進行し、在宅での介護が困難になった場合、施設への入居が選択肢となります。認知症の方を受け入れている主な施設は以下の通りです。

    施設の種類特徴費用(月額目安)
    グループホーム認知症の方を対象とした少人数の共同生活施設。家庭的な雰囲気の中で専門的なケアを受けられる[4]。15万円~20万円[5]
    特別養護老人ホーム(特養)公的な施設で、費用が比較的安い。要介護3以上が原則で、待機者が多い[6]。10万円~15万円
    介護付き有料老人ホーム24時間体制で手厚い介護サービスを受けられる。施設によって設備やサービスが多様で、費用も幅広い[6]。15万円~30万円以上
    サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)自立度の高い方向けの賃貸住宅。安否確認や生活相談サービスが付いている。介護が必要な場合は外部サービスを利用[6]。10万円~25万円

    施設を選ぶ際は、費用だけでなく、認知症ケアの実績、スタッフの専門性、施設の雰囲気、医療連携体制などを総合的に比較検討することが重要です。

    家族の負担を軽減するために

    認知症介護は、介護者の心身に大きな負担をかけ、介護離職や「介護うつ」につながることも少なくありません。家族の負担を軽減するためには、一人で抱え込まず、社会資源を積極的に活用することが不可欠です。

    1. 公的制度を最大限に活用する

    •高額介護サービス費制度: これまでの記事でも解説した通り、自己負担額の上限を超えた分が払い戻されます。

    •介護休業給付金: 介護のために仕事を休む際に、収入の67%が支給されます。

    •成年後見制度: 認知症により判断能力が低下した方の財産管理や契約行為を、後見人が法的に支援する制度です。

    2. 相談窓口を頼る

    •地域包括支援センター: 介護に関する最初の相談窓口です。ケアマネジャーや社会福祉士などの専門家が、無料で相談に応じてくれます。

    •かかりつけ医・専門医療機関: 認知症の診断や治療、薬の相談など、医療的なサポートを受けられます。

    •認知症カフェ(オレンジカフェ): 認知症の方やその家族、地域住民、専門家が気軽に集い、情報交換や交流ができる場です。

    •家族会: 同じ悩みを持つ介護者同士で、情報交換や精神的な支え合いができます。

    3. 介護サービスを上手に組み合わせる

    在宅介護の場合でも、様々なサービスを組み合わせることで、介護者の負担を軽減できます。

    •ショートステイ: 短期間、施設に宿泊して介護を受けられるサービス。介護者の休息(レスパイトケア)のために利用できます。

    •デイサービス(通所介護): 日帰りで施設に通い、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けられます。

    •訪問介護: ヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行います。

    まとめ:一人で抱え込まない介護へ

    認知症介護は、終わりが見えにくい長期戦です。経済的な備えはもちろん重要ですが、それ以上に、介護者が一人で抱え込まず、社会とつながり、適切な支援を受けることが大切です。

    この連載を通じて、介護とお金に関する様々な知識をお伝えしてきました。介護は、決して特別なことではなく、誰もが当事者になりうる身近な問題です。正しい情報を知り、早期に準備を始めることが、あなた自身と大切な家族を守ることに繋がります。

    介護に直面した時、あるいは将来に不安を感じた時、この連載で得た知識が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

    参考文献

    [1] FONESLIFE. 「認知症になった親の介護、費用はどれぐらいかかる? 専門家に」. https://foneslife.com/healthcare-magazine/entry/2024/05/27/103000 [2] みんなの介護. 「全国の認知症の方が入居できる老人ホームの相場」. https://www.minnanokaigo.com/search/ninchisyo/ [3] 朝日生命. 「認知症介護で入居する施設の費用はいくらかかる?それぞれ」. https://www.asahi-life.co.jp/nethoken/howto/ninchisyo/facilities-for-dementia-care.html [4] サニーライフ. 「認知症に強い介護施設の選び方!入居できる施設の種類や」. https://www.sunnylife-group.co.jp/contents/%25E8%25AA%258D%25E7%259F%25A5%25E7%2597%2587%25E3%2581%25AB%25E5%25BC%25B7%25E3%2581%2584%25E4%25BB%258B%25E8%25AD%25B7%25E6%2596%25BD%25E8%25A8%25AD%25E3%2581%25AE%25E9%2581%25B8%25E3%2581%25B3%25E6%2596%25B9%25EF%25BC%2581%25E5%2585%25A5%25E5%25B1%2585%25E3%2581%25A7%25E3%2581%258D%25E3%2582%258B%25E6%2596%25BD%25E8%25A8%25AD%25E3%2581%25AE%25E7%25A8%25AE%25E9%25A1%259E%25E3%2582%2584%25E6%259D%25A1%25E4%25BB%25B6%25E3%2582%2592%25E8%25A7%25A3%25E8%25AA%25AC [5] 大物クリニック. 「認知症対応の介護施設を選ぶ方法と入居にかかる費用相場」. https://www.omono-clinic.jp/dementia-market-price [6] 介護のほんね. 「認知症でも入れる施設選びポイントは?入居のタイミング」. https://kaigo.homes.co.jp/manual/dementia/care/select/

  • 親の介護、始まる前に何をすべき?後悔しないための準備リスト

    はじめに

    これまでの連載で、介護費用の全体像から具体的な節約術、そして介護の選択肢まで、多岐にわたる情報をお届けしてきました。介護は、ある日突然始まることが少なくありません。その時になって慌てないためにも

    、親が元気なうちから準備を進めておくことが、後悔しないための鍵となります。

    本記事では、「親の介護が始まる前に何をすべきか」というテーマに焦点を当て、具体的な準備リストと、家族で話し合うべきポイントを解説します。円滑な介護体制を築くための第一歩として、ぜひ参考にしてください。

    なぜ事前の準備が重要なのか

    介護が始まると、要介護認定の申請、ケアプランの作成、介護サービスの契約など、短期間で多くのことを決定し、手続きを進めなければなりません。精神的にも時間的にも余裕がない中で、最適な判断を下すのは非常に困難です。

    事前に準備をしておくことで、以下のようなメリットがあります。

    •親の希望を尊重できる: 親がどのような介護を望んでいるのかを事前に確認し、その意向を尊重した介護計画を立てやすくなります。

    •家族間のトラブルを避けられる: 介護の役割分担や費用負担について事前に話し合っておくことで、家族間の意見の対立やトラブルを防ぐことができます。

    •経済的な見通しが立てやすい: 介護にかかる費用や、利用できる公的制度を把握しておくことで、経済的な不安を軽減できます。

    •いざという時に迅速に行動できる: 相談窓口や利用できるサービスを事前に知っておくことで、必要な時にすぐに行動に移せます。

    親の介護準備チェックリスト

    親が元気なうちに、以下の項目について確認・整理しておきましょう。

    1. 親の状況の把握

    •健康状態: 現在の健康状態、持病、かかりつけ医、服用している薬などを把握しておきましょう。お薬手帳のコピーをもらっておくと便利です。

    •経済状況: 年金の受給額、預貯金、保険、不動産などの資産状況を大まかに確認しておきましょう。介護費用を誰がどのように負担するのかを考える上で重要です[1]。

    •生活状況: 日常生活で困っていることはないか、友人関係や趣味など、親の生活全般に関心を持ち、コミュニケーションを取ることが大切です。

    •介護に対する意向: 将来、介護が必要になった場合、どこで(自宅、施設など)、どのような介護を受けたいか、親の希望を聞いておきましょう。延命治療に関する意向なども含めて、デリケートな話題ですが、元気なうちに話し合っておくことが重要です。

    2. 家族間の話し合い(家族会議)

    •キーパーソンの決定: 介護の中心となる「キーパーソン」を誰が担うのかを決めておきましょう。キーパーソンは、ケアマネジャーとの連絡調整や、各種手続きの中心的な役割を担います。

    •役割分担: 介護は一人で抱え込めるものではありません。兄弟姉妹がいる場合は、それぞれの状況に合わせて、費用負担、身体的な介護、手続きの代行など、具体的な役割分担を決めておきましょう[2]。

    •情報共有の方法: 離れて暮らす家族がいる場合、どのように情報を共有し、連携していくのかを決めておくことも大切です。

    3. 介護に関する情報収集

    •相談窓口の確認: 介護に関する最初の相談窓口となる「地域包括支援センター」の場所と連絡先を確認しておきましょう。地域包括支援センターは、高齢者の生活を総合的に支援する機関で、介護に関する様々な相談に応じてくれます[3]。

    •介護保険制度の理解: これまでの記事でも解説した通り、介護保険制度の基本的な仕組み(要介護認定、ケアプラン、利用できるサービスなど)を理解しておきましょう。

    •地域の介護サービス: 親が住む地域に、どのような介護サービス事業者(訪問介護、デイサービス、ショートステイなど)があるのかを調べておくと、いざという時に役立ちます。

    話し合いを始めるきっかけ

    親と介護について話すのは、なかなか切り出しにくいものです。以下のようなタイミングをきっかけに、自然な形で話し合いを始めてみてはいかがでしょうか。

    •親戚や知人の介護が始まった時

    •テレビや雑誌で介護の特集を見た時

    •親の誕生日や敬老の日など、節目となる日

    •親が体力の衰えを感じ始めた時

    まとめ

    親の介護は、決して他人事ではありません。元気なうちから準備を始めることは、親への最大の思いやりであり、自分自身や家族を守ることにもつながります。

    今回ご紹介したチェックリストを参考に、まずはできることから始めてみましょう。大切なのは、家族でオープンに話し合い、協力体制を築いておくことです。事前の準備が、将来の不安を軽減し、後悔のない介護を実現するための確かな土台となります。

    参考文献

    [1] 朝日生命. 「親の介護の備え方・注意点」. https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/kaigo/column15/ [2] 大和ハウス工業. 「お金や仕事はどうする?親の介護準備、介護者が知っておき」. https://www.daiwahouse.co.jp/stock/column/kaigo/vol04/ [3] みんなの介護. 「【チェックリスト】親の自宅介護に必要なお金の準備はどれくらい?」. https://www.minnanokaigo.com/guide/homecare/preparation/

  • 在宅介護と施設介護、どちらがお得?費用とメリット・デメリット比較

    はじめに

    これまでの記事で、介護費用の全体像、公的・民間介護保険、世帯分離、介護離職防止策、そして各種助成金・補助金、さらには介護資金準備のためのNISA活用について解説してきました。介護が必要になった際、次に直面する大きな選択は「在宅介護」と「施設介護」のどちらを選ぶかという点です。

    この選択は、費用面だけでなく、介護を受ける方の生活の質や、介護をする家族の負担にも大きく影響します。本記事では、在宅介護と施設介護それぞれの費用、メリット、デメリットを比較し、ご自身の状況に合った選択をするためのポイントを解説します。

    在宅介護と施設介護の費用比較

    一般的に、施設介護の方が月額費用は高くなる傾向にありますが、一概にどちらがお得とは言えません。介護の状況や利用するサービスによって費用は大きく変動します。

    介護形態月額費用(平均)主な費用の内訳
    在宅介護5.2万円 [1]介護サービス自己負担分、食費、医療費、日用品費、交通費など
    施設介護12.2万円 [2]施設利用料(居住費、食費、管理費)、介護サービス自己負担分、医療費、お小遣いなど

    在宅介護の費用

    在宅介護の月額平均費用は約5.2万円とされています[1]。この内訳は、介護保険サービス費用が平均1万6,000円、介護サービス費用以外が3万4,000円程度です[3]。しかし、これはあくまで平均であり、介護度や利用するサービス、住宅改修の有無などによって大きく変動します。例えば、要介護度が高くなると、訪問介護や通所介護の利用頻度が増え、自己負担額も増加します。

    施設介護の費用

    施設介護の月額平均費用は約12.2万円と、在宅介護に比べて高額になる傾向があります[2]。施設の種類(特別養護老人ホーム、有料老人ホームなど)、居室のタイプ、提供されるサービス内容によって費用は大きく異なります。入居時に数百万円から数千万円の「入居一時金」が必要となる施設もあります[4]。

    在宅介護のメリット・デメリット

    メリット

    •住み慣れた環境で生活できる: 介護を受ける方が、慣れ親しんだ自宅や地域で生活を続けられるため、精神的な安定につながります[5]。

    •家族との時間を確保しやすい: 家族が常にそばにいることができるため、コミュニケーションを密に取ることができます[6]。

    •生活サイクルを維持しやすい: 施設入所と異なり、個人の生活リズムや習慣を比較的自由に維持できます。

    •費用を抑えられる可能性がある: 介護度や利用サービスによっては、施設介護よりも費用を抑えられる場合があります。

    デメリット

    •介護者の負担が大きい: 介護をする家族に、身体的・精神的・時間的な負担が集中しやすく、介護疲れや介護離職につながるリスクがあります[7]。

    •プライベートな時間の確保が難しい: 介護者は自分の時間や休息を取りにくくなることがあります。

    •専門的なケアの限界: 医療行為や夜間の緊急対応など、専門的なケアが必要な場合に限界があることがあります。

    •住宅改修の必要性: バリアフリー化など、自宅の改修が必要になる場合があります。

    施設介護のメリット・デメリット

    メリット

    •専門的なケアを受けられる: 24時間体制で専門スタッフによる介護や医療ケアを受けられるため、介護者の負担が軽減されます[8]。

    •安心・安全な環境: バリアフリー設計や緊急対応体制が整っており、安全に生活できます。

    •レクリエーションや交流の機会: 他の入居者との交流やレクリエーション活動を通じて、生活の質が向上する可能性があります[9]。

    •介護者の負担軽減: 家族は介護から解放され、自分の時間や仕事に集中できるようになります。

    デメリット

    •費用が高額になる傾向: 入居一時金や月額費用が高額になることが多く、経済的な負担が大きくなります[10]。

    •住み慣れた環境からの変化: 環境の変化に馴染めず、精神的なストレスを感じる場合があります。

    •自由度の制限: 施設のルールや集団生活に合わせる必要があり、生活の自由度が制限されることがあります。

    •面会時間の制限: 施設によっては面会時間が決められている場合があります。

    どちらを選ぶべきか?選択のポイント

    在宅介護と施設介護のどちらを選ぶかは、以下の要素を総合的に考慮して判断することが重要です。

    1.介護を受ける方の意向: 最も重要なのは、介護を受ける方がどのような生活を望んでいるかです。自宅で過ごしたいのか、専門的なケアを受けたいのかなど、本人の意思を尊重しましょう。

    2.介護者の状況: 介護をする家族の健康状態、仕事の状況、経済状況、介護経験などを考慮し、無理なく介護を続けられるかを見極める必要があります。

    3.要介護度と必要なケア: 要介護度が高く、医療的ケアが頻繁に必要な場合は、施設介護の方が適している場合があります。逆に、比較的軽度な場合は在宅介護でも十分対応可能です。

    4.経済状況: 介護費用は長期にわたるため、世帯の経済状況を考慮し、無理のない範囲で選択することが重要です。公的制度や助成金なども活用しましょう。

    5.利用できる介護サービス: 地域で利用できる介護サービスの種類や質も、選択に影響します。地域包括支援センターなどで情報収集を行いましょう。

    まとめ

    在宅介護と施設介護には、それぞれ費用面、生活面、精神面で異なるメリットとデメリットがあります。どちらが「お得」という単純な比較ではなく、介護を受ける方と介護をする家族双方にとって、最も良い選択をすることが重要です。

    後悔のない選択をするためには、早めに情報収集を行い、家族で十分に話し合い、必要であればケアマネジャーやファイナンシャルプランナーなどの専門家にも相談しながら、慎重に検討を進めることをお勧めします。

    参考文献

    [1] フランスベッド. 「在宅介護の平均費用は?老人ホームとの比較や要介護度別」. https://medical.francebed.co.jp/special/column/08_hiyou.php [2] ファミトラ. 「介護費用の平均額と内訳|施設・在宅でどう違う?誰が負担」. https://www.famitra.jp/article/kaigo/post-139/ [3] みんなの介護. 「【誰が負担する?】在宅介護の平均費用(訪問・通所)を解説」. https://www.minnanokaigo.com/guide/homecare/compare-cost/ [4] みんなの介護. 「【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)」. https://www.minnanokaigo.com/guide/cost/ [5] 埼玉りそな銀行. 「在宅介護とは? メリットやデメリット、受けられるサービス」. https://www.saitamaresona.co.jp/mikke/life/life_0004.html [6] みんなの介護. 「Q. 在宅介護と施設介護はどう違う?それぞれのメリット・」. https://www.minnanokaigo.com/qa/no48/ [7] 朝日生命. 「在宅介護とは?メリット・デメリット、受けられるサービス」. https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/kaigo/column41/ [8] 一郎. 「在宅介護と施設介護どちらを選べばいい?それぞれのメリット」. https://ichirou.co.jp/column/1669 [9] サガシキ. 「【徹底解説】老人ホームのメリットとデメリットとは」. https://www.sagasix.jp/knowledge/about/rojinhome-merit-demerit/ [10] シニアホームの窓口. 「【比較表あり】老人ホームに入居するメリット・デメリットを詳しく」. https://www.seniorhome-mado.com/news/nursing-home-benefits/

  • 介護に備える資産運用:新NISAを賢く活用する

    はじめに

    これまでの記事で、介護費用の全体像、公的・民間介護保険、世帯分離、介護離職防止策、そして各種助成金・補助金について解説してきました。介護は長期にわたる可能性があり、その費用は決して少なくありません。そのため、計画的な資金準備が非常に重要となります。

    本記事では、介護に備えるための資産運用として、特に2024年から新制度が始まった**NISA(少額投資非課税制度)**をどのように活用すべきかについて、具体的な方法と注意点を解説します。既存記事で触れた「つみたてNISA」の考え方をさらに深掘りし、介護資金の準備に特化した視点でお伝えします。

    なぜ介護資金の準備に資産運用が必要なのか

    介護費用は、一時費用と月額費用を合わせると平均で500万円を超えると言われています。また、介護期間も平均で約4年7ヶ月と長期にわたるため、貯蓄だけでは心許ないと感じる方もいるでしょう。さらに、物価上昇や低金利の時代において、預貯金だけでは資産が目減りするリスクもあります。

    そこで、資産運用を組み合わせることで、効率的に介護資金を準備し、将来の経済的な不安を軽減することが可能になります。

    新NISAとは?介護資金準備におけるメリット

    NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。2024年から新NISAとして制度が拡充され、より多くの人が資産形成を行いやすくなりました。介護資金準備において、新NISAを活用するメリットは以下の通りです。

    1.非課税投資枠の拡大: 年間投資枠が最大360万円、生涯投資枠が1800万円に拡大され、より多くの資金を非課税で運用できるようになりました[1]。これにより、介護資金としてまとまった金額を効率的に準備しやすくなります。

    2.非課税保有期間の無期限化: 投資で得た利益が非課税になる期間が恒久化されたため、長期的な視点で介護資金を育成できます。介護が必要になる時期が不確実な中でも、安心して運用を続けられます[1]。

    3.つみたて投資枠と成長投資枠の併用: 毎月コツコツ積立投資を行う「つみたて投資枠」と、個別株や投資信託に投資できる「成長投資枠」を併用できるため、ご自身の投資スタイルやリスク許容度に合わせて柔軟な運用が可能です[1]。

    4.いつでも引き出し可能: NISA口座で運用している資金は、必要な時にいつでも引き出すことができます。個人年金保険などと異なり、中途解約によるペナルティがないため、介護が必要になった際に柔軟に対応できます[2]。

    新NISAを活用した介護資金準備のポイント

    1. 目標額と期間の設定

    まずは、介護費用としてどのくらいの資金が必要になるか、ざっくりと目標額を設定しましょう。前回の記事で紹介した平均費用などを参考に、ご自身の状況に合わせて計画を立てることが重要です[3]。

    2. 長期・積立・分散投資の徹底

    新NISAの「つみたて投資枠」を活用し、毎月一定額をコツコツと積み立てていく「長期・積立・分散投資」を基本としましょう。これにより、価格変動リスクを抑えつつ、複利効果を最大限に活かして効率的に資産を増やしていくことが期待できます[4]。

    3. 余裕資金での運用

    資産運用は元本割れのリスクがあるため、必ず「余裕資金」で行うことが鉄則です。生活防衛資金(生活費の3ヶ月~半年分程度)を確保した上で、投資に回す資金を検討しましょう[4]。

    4. 定期的な見直し

    介護資金の準備は長期にわたるため、定期的に運用状況や目標額を見直すことが大切です。ライフステージの変化や介護制度の改正などに応じて、計画を柔軟に調整しましょう。

    まとめ

    介護は、いつか誰もが直面する可能性のある重要なライフイベントです。その経済的な負担を軽減するためには、公的制度の活用と並行して、計画的な資産形成が不可欠です。

    新NISAは、非課税で効率的に資産を増やせる優れた制度であり、介護資金の準備に大いに役立ちます。長期・積立・分散投資を基本に、ご自身の状況に合わせた運用計画を立て、将来の介護に安心して備えましょう。もし不安な点があれば、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも検討してください。

    参考文献

    [1] 金融庁. 「新しいNISA」. https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/index.html [2] ウェルスナビ. 「個人年金保険とNISA・iDeCoの違い|個人で年金を準備する」. https://www.wealthnavi.com/wealthguide/articles/1215 [3] ヨクラス. 「シニア世代の資産運用入門:「プラチナNISA」で見える老後の」. https://yokuras.com/blog/5282/ [4] 川村FP事務所. 「「親と自分の介護費用、どう準備する?賢い資産管理とNISA」. https://www.kawamura-fp.com/2023/05/07/%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E8%B2%BB%E7%94%A8%E3%82%92%E3%81%A9%E3%81%86%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E7%A9%8D%E3%81%BF%E7%AB%8B%E3%81%A6%E3%82%8B/

  • 知っておきたい!介護保険サービスで利用できる助成金・補助金ガイド

    はじめに

    これまでの記事で、介護費用の全体像から保険の活用、世帯分離、そして介護離職を防ぐ経済的支援策まで、多角的に解説してきました。介護には様々な費用がかかりますが、幸いなことに、その負担を軽減するための公的な助成金・補助金制度が数多く用意されています。

    本記事では、介護が必要になった際に活用できる主要な助成金・補助金制度に焦点を当て、その内容、対象者、申請方法などを分かりやすく解説します。これらの制度を知っているか知らないかで、経済的な負担は大きく変わってきます。

    1. 高額介護サービス費制度

    高額介護サービス費制度は、1ヶ月に支払った介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です[1]。

    •目的: 介護サービス利用者の経済的負担を軽減する。

    •上限額: 世帯の所得状況によって、月々の負担上限額が異なります(例:一般的な所得の世帯で月額44,400円など)[2]。

    •申請方法: 初めて対象となった際に、市区町村から申請書が送られてくるのが一般的です。一度申請すれば、次回以降は自動的に払い戻されます。

    •注意点: 施設サービスの食費や居住費、福祉用具の購入費、住宅改修費などは対象外です。

    2. 居宅介護(介護予防)住宅改修費の支給

    在宅介護を安全かつ快適に行うために、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修(バリアフリーリフォーム)を行う際に利用できる補助金です[3]。

    •目的: 要介護者の自立支援と、介護者の負担軽減を図る。

    •対象工事: 手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替えなど。

    •支給限度額: 支給限度基準額は20万円です。そのうち、所得に応じた自己負担割合(1割~3割)を除いた額が支給されます(最大18万円)[4]。

    •申請方法: 工事着工前に、ケアマネジャー等と相談の上、市区町村への事前申請が必要です。事後の申請は認められないため、注意が必要です。

    3. 特定福祉用具購入費の支給

    入浴や排泄など、レンタルになじまない特定の福祉用具を購入した際に、その費用の一部が支給される制度です[5]。

    •目的: 要介護者の日常生活の自立を助ける。

    •対象品目: 腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すりなど)、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分など。

    •支給限度額: 年間(4月1日から翌年3月31日まで)10万円が上限です。そのうち、自己負担割合(1割~3割)を除いた額が支給されます(最大9万円)[5]。

    •申請方法: 指定された事業者から福祉用具を購入した後、市区町村に申請します。

    4. 高額医療・高額介護合算療養費制度

    1年間(毎年8月1日から翌年7月31日まで)に支払った医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です[6]。

    •目的: 医療と介護の両方を利用する世帯の負担を軽減する。

    •注意点: 世帯分離をしている場合、この制度は利用できなくなります。世帯分離を検討する際は、このデメリットも考慮する必要があります。

    5. 自治体独自の助成金・サービス

    上記の国の制度に加えて、市区町村が独自に設けている助成金やサービスもあります。

    •家族介護慰労金: 過去1年間、介護保険サービスを利用せずに在宅で要介護4または5の方を介護した家族に対して、慰労金を支給する制度。

    •おむつ代の助成: 在宅で常時おむつを使用している方に対して、おむつの現物支給や購入費の助成を行う制度。

    これらの制度の有無や内容は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の高齢者福祉担当窓口や、地域包括支援センターに確認することが重要です。

    まとめ

    介護費用の負担は決して軽いものではありませんが、今回ご紹介したような公的な助成金・補助金制度を賢く活用することで、その負担を大きく軽減することが可能です。重要なのは、これらの制度の存在を知り、適切なタイミングで申請することです。

    介護が必要になった際は、一人で抱え込まず、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターの専門家に相談しましょう。利用できる制度を最大限に活用し、経済的な不安を少しでも和らげながら、安心して介護に臨める環境を整えていきましょう。

    参考文献

    [1] 楽天カード. 「高額介護サービス費とは?制度の内容やいくら戻るのかを」. https://www.rakuten-card.co.jp/minna-money/topic/article_2401_00032/ [2] 厚生労働省. 「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」. https://www.mhlw.go.jp/content/000334526.pdf [3] 株式会社IRS. 「介護で利用できる補助金と、介護費用の負担軽減に役立つ主な」. https://www.irs.jp/media/knowledge/%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E3%81%A7%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E9%87%91.html [4] 朝日生命. 「介護リフォームの補助金とは?支給要件や対象工事と申請」. https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/kaigo/column5/11/ [5] 日建リース工業株式会社. 「介護で受けられる補助金・助成金とは? 種類や条件」. https://www.nrg.co.jp/nikkenlease/n-column/subsidy [6] 朝日生命. 「介護で活用できる補助金制度を8つ紹介!」. https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/kaigo/column14/03/

  • 介護費用を賢く節約!世帯分離のメリット・デメリットと手続き

    はじめに

    前々回の記事では介護費用の全体像を、前回の記事では公的介護保険と民間介護保険について解説しました。介護費用は家計に大きな負担となることがありますが、様々な制度や工夫でその負担を軽減することが可能です。その一つに「世帯分離」があります。

    本記事では、介護費用を節約するための有効な手段として注目される「世帯分離」について、その仕組み、メリット、デメリット、そして具体的な手続き方法を詳しく解説します。

    世帯分離とは?

    世帯分離とは、同居している家族が住民票上の世帯を分けることを指します[1]。例えば、親と子が同居している場合、住民票上は一つの世帯ですが、世帯分離を行うことで、親と子それぞれが独立した世帯として扱われるようになります。ただし、実際に別居する必要はなく、同じ住所に住みながら住民票上の世帯を分けることが可能です。

    世帯分離は、主に介護保険料や医療費、住民税などの公的負担額を軽減するために利用されることがあります。

    世帯分離のメリット

    世帯分離を行うことで、特に介護が必要な世帯において、以下のような経済的なメリットが期待できます。

    1.介護費用の自己負担額を軽減できる可能性がある

    •介護保険サービスの自己負担額には、世帯の所得に応じた上限額(高額介護サービス費)が設定されています。世帯分離により、介護サービスを受ける方の世帯所得が低くなると、この上限額が下がり、結果として自己負担額が軽減される可能性があります[2]。

    2.介護保険施設の居住費・食費が軽減される可能性がある

    •介護保険施設に入所する際の居住費や食費は、所得に応じて負担限度額が設けられています。世帯分離によって介護を受ける方の所得が低く見なされると、これらの費用も軽減される場合があります[3]。

    3.国民健康保険料が安くなる可能性がある

    •国民健康保険料は世帯単位で計算されるため、世帯分離によって所得の低い方が独立した世帯となることで、その方の国民健康保険料が安くなる可能性があります[4]。

    4.後期高齢者医療保険料が安くなる可能性がある

    •後期高齢者医療制度の保険料も、世帯の所得に応じて決まります。世帯分離により、介護を受ける方の保険料が軽減されることがあります[4]。

    5.住民税の負担が軽減される可能性がある

    •住民税の非課税限度額は世帯単位で判断されるため、世帯分離によって住民税が非課税となる、あるいは軽減される可能性があります[4]。

    世帯分離のデメリット・注意点

    多くのメリットがある一方で、世帯分離には以下のようなデメリットや注意点も存在します。

    1.扶養手当や家族手当がなくなる可能性がある

    •会社によっては、扶養手当や家族手当の支給条件に「同一生計」が含まれる場合があります。世帯分離により、これらの手当が支給されなくなる可能性があります。

    2.確定申告で医療費控除を合算できなくなる

    •世帯分離をすると、別世帯となるため、確定申告で医療費控除を合算して申告することができなくなります。これにより、控除額が減る可能性があります。

    3.高額医療・高額介護合算療養費制度の利用が難しくなる

    •医療費と介護費の自己負担額を合算して上限を超えた場合に払い戻される「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、同一世帯であることが条件です。世帯分離をすると、この制度を利用できなくなるため、注意が必要です[5]。

    4.住民票の発行や手続きが別々になる

    •世帯が別になるため、住民票の写しなどの公的書類の発行や、行政手続きがそれぞれ別々に行う必要が生じ、手間が増える可能性があります。

    世帯分離の手続き方法

    世帯分離の手続きは、お住まいの市区町村役場の窓口で行います。主な手順は以下の通りです。

    1.必要書類の準備: 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)、印鑑、国民健康保険証、介護保険証などが必要となる場合があります。事前に役場に確認しましょう[6]。

    2.窓口での申請: 住民異動届(世帯分離届)を記入し、窓口に提出します。世帯主となる方と、世帯分離する方の両方の情報が必要です。

    3.理由の記載: 世帯分離の理由を具体的に記載する必要があります。介護費用の軽減目的であることを明確に伝えましょう。

    手続き自体は比較的簡単ですが、不明な点があれば役場の担当窓口に相談することをおすすめします。

    まとめ

    世帯分離は、介護費用や医療費、保険料などの公的負担を軽減するための有効な手段となり得ます。特に、介護を受ける方の所得が低い場合に、高額介護サービス費の上限額が下がるなど、経済的なメリットは大きいでしょう。

    しかし、扶養手当の喪失や医療費控除の合算不可など、デメリットも存在するため、世帯全体の状況を総合的に判断し、慎重に検討することが重要です。ご自身の状況に合わせて、メリットとデメリットを比較検討し、必要であれば専門家にも相談しながら、最適な選択をしてください。

    参考文献

    [1] 株式会社IRS. 「世帯分離とは?介護費用の節約に役立つ」. https://www.irs.jp/media/knowledge/%E4%B8%96%E5%B8%AF%E5%88%86%E9%9B%A2%E3%81%A8%E3%81%AF.html [2] 介護ポストセブン. 「「世帯」を分ければ介護費用が減る!手続き5分の簡単裏ワザ」. https://kaigo-postseven.com/89228 [3] ココファン. 「【イラストで解説】世帯分離とは|メリット・デメリットや」. https://www.cocofump.co.jp/articles/kaigo/65/ [4] 介護のほんね. 「世帯分離とは?メリットとデメリット、検討項目を分かりやすく解説」. https://kaigo.homes.co.jp/manual/money/household_separation/ [5] RIEI介護. 「世帯分離を検討すべきタイミングは?手続き方法や注意点も紹介」. https://riei-kaigo.jp/column/post-17818/ [6] RIEI介護. 「世帯分離の手続きはどうすればいい?注意すべきポイントや」. https://riei-kaigo.jp/column/post-19737/

  • 公的介護保険と民間介護保険:介護に備える賢い保険の選び方

    はじめに

    前回の記事では、介護にかかる費用の全体像について解説しました。介護費用は決して少なくないため、計画的な準備が不可欠です。その準備の一つとして「保険」が挙げられますが、公的な介護保険と民間の介護保険、それぞれどのような役割があり、どのように活用すべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

    本記事では、公的介護保険制度の概要と、民間の介護保険の必要性や選び方について、介護に備えるという視点から詳しく解説します。

    公的介護保険制度の概要

    公的介護保険制度は、介護が必要となった高齢者やその家族を社会全体で支えることを目的とした社会保険制度です[1]。40歳以上の国民が加入を義務付けられており、保険料を納めることで、介護が必要になった際に介護サービスを原則1割(所得に応じて2割または3割)の自己負担で利用できます[2]。

    サービス利用の対象者

    •第1号被保険者(65歳以上): 要介護認定で「要支援」または「要介護」と判定されれば、原因を問わず介護サービスを利用できます[3]。

    •第2号被保険者(40歳~64歳の医療保険加入者): 介護保険法で定められた16種類の特定疾病(末期がん、関節リウマチなど)が原因で要介護状態になった場合に限り、介護サービスを利用できます[4]。

    公的介護保険で利用できるサービス

    公的介護保険では、以下のような多岐にわたるサービスが提供されます[5]。

    •居宅サービス: 訪問介護、訪問看護、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)、福祉用具のレンタル・購入費の支給、住宅改修費の支給など。

    •施設サービス: 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などへの入所。

    これらのサービスを利用することで、介護者の負担軽減や、被介護者の自立した生活の維持が図られます。

    民間介護保険の必要性と役割

    公的介護保険は非常に手厚い制度ですが、全ての費用をカバーできるわけではありません。例えば、以下のような費用は公的介護保険の対象外となります。

    •自己負担割合分: 介護サービス費の1割~3割の自己負担分。

    •介護保険の支給限度額を超えたサービス費用。

    •食費や居住費: 施設入所時の食費や居住費の一部。

    •おむつ代や日用品費: 在宅・施設問わず、日常生活で必要となる消耗品費。

    •交通費、理美容代、レクリエーション費用など。

    これらの公的介護保険でカバーしきれない費用を補うために検討されるのが、民間介護保険です[6]。

    民間介護保険のメリット・デメリット

    項目メリットデメリット
    メリット・公的介護保険の対象外費用をカバーできる・保険料の負担が発生する
    ・受け取った保険金の使途が自由・公的介護保険の認定と異なる場合がある
    ・介護期間が長期化した場合の経済的リスク軽減・早期に解約すると元本割れのリスクがある

    民間介護保険から受け取った保険金は、公的介護保険では賄えない費用(例:リハビリ費用、おむつ代、施設入所後の食事代など)に充てることができ、使途が自由である点が大きな特徴です[6]。これにより、介護の選択肢が広がり、より質の高い介護サービスを受けられる可能性が高まります。

    一方で、保険料の負担が発生することや、公的介護保険の要介護認定とは別に、保険会社独自の基準で給付条件が定められている場合がある点には注意が必要です。

    民間介護保険が必要な人

    以下のような方は、民間介護保険の必要性が高いと考えられます[7]。

    •貯蓄が少ない、または将来的な収入に不安がある方

    •家族に経済的負担をかけたくないと考えている方

    •公的介護保険ではカバーできない、より手厚い介護サービスを希望する方

    •介護期間が長期化した場合の経済的リスクに備えたい方

    賢い保険の選び方

    介護に備える保険を選ぶ際は、以下のポイントを考慮しましょう。

    1.公的介護保険の理解: まずは公的介護保険でどのようなサービスが受けられ、自己負担がどの程度になるのかを正確に把握することが重要です。

    2.自己資金の確認: 貯蓄や年金など、ご自身の自己資金でどれくらいの介護費用を賄えるのかを確認します。

    3.不足分の把握: 公的介護保険と自己資金で不足する部分を明確にし、その不足分を補うために民間介護保険が必要かどうかを検討します。

    4.保障内容と保険料のバランス: 民間介護保険を選ぶ際は、保障内容(一時金、年金形式など)と保険料のバランスを考慮し、無理なく続けられるものを選びましょう。

    まとめ

    公的介護保険は、介護を社会全体で支えるための重要な制度であり、多くの介護サービスを少ない自己負担で利用できます。しかし、全ての費用をカバーできるわけではないため、不足する部分を補うために民間介護保険が有効な選択肢となります。

    ご自身の経済状況や将来の介護に対する考え方を踏まえ、公的介護保険と民間介護保険を賢く組み合わせることで、安心して介護に備えることができるでしょう。

    参考文献

    [1] 厚生労働省. 「介護保険制度の概要」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html [2] みんなの介護. 「【2025年最新版】介護保険制度とは?仕組みや保険料をわかり」. https://www.minnanokaigo.com/guide/care-insurance/ [3] 生命保険文化センター. 「公的介護保険で受けられるサービスの内容は?」. https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1110.html [4] サガシキ. 「介護保険の適用範囲とは?知るべき4つのポイント」. https://www.sagasix.jp/knowledge/hoken/scope/ [5] みんなの介護. 「【種類一覧表あり】介護保険サービスとは?内容や自己負担額」. https://www.minnanokaigo.com/guide/care-insurance/service/ [6] 保険の窓口. 「民間の介護保険の必要性やメリット・デメリット、選び方を徹底解説」. https://www.hokennomadoguchi.com/columns/seimei/kaigo/merit-demerit/ [7] i-世代. 「民間介護保険は必要ない?メリット・デメリットや必要性が高い人」. https://www.i-sedai.com/contents/money/M0123.html

  • つみたてNISA入門月1万円からはじめる超やさしい長期投資

    固定費見直しチェックリスト|介護×お金ラボ

    介護福祉士・FPのNobuです。
    まず、がんばって節約しても物価は上がりつづけます。だから、「貯める」だけでなく「増やすしくみ」を持つことが大切です。そこで、初心者に最初の一歩としておすすめなのがつみたてNISAです。


    このページでできること

    • まず、つみたてNISAがどんな制度か“ざっくり理解”
    • 次に、口座の作り方・買い方を“3ステップ”で実行
    • 最後に、続けるコツと“やってはいけないNG”を学ぶ

    スタート前の準備(ここが9割)

    まず、以下の3つを整えてから始めましょう。

    • 生活防衛資金:生活費の3〜6か月分を現金で確保
    • 高金利の借金:リボ・カードローンなどは先に完済
    • 固定費:スマホは格安SIM/保険は“守るだけ”(収入保障など最小限)

    → 固定費の整え方:固定費5つの見直しチェックリスト
    つまり、“投資は余力でやる”が大原則です。


    つみたてNISAってなに?

    一言でいうと、「投資で得た利益が非課税(税金ゼロ)になる制度」です。
    さらに、“毎月の自動積立”が前提なので、忙しくても続けやすい設計です。
    一方で、元本は保証されません。だから、短期で増やそうとせず長期でコツコツが基本です。


    どんな商品を買うの?

    結論として、初心者は低コストのインデックス投信が王道です。
    たとえば、次の“王道3タイプ”から選びます。

    • 全世界株式:世界中に分散。これ1本でOKな主力候補。
    • 米国株式:米国の経済成長に乗るタイプ。
    • 国内株式:日本を少し入れたい人向けにサブで。

    ポイントは、手数料(信託報酬)が低い」「長く売られている王道」を選ぶこと。
    つまり、速そうに見える高コスト商品より、地味でも低コストが勝ちやすいです。


    口座づくり〜購入まで:3ステップ

    まず、口座(証券会社)を作ります。
    次に、商品を選んで毎月の積立を設定します。
    最後に、自動で買い付けられるように入金を仕組み化します。

    ステップ1|証券口座を作る

    • スマホで本人確認 → 口座開設
    • 銀行と連携(自動入金があるとラク)
    • アプリを入れてログイン

    ステップ2|商品を選ぶ

    • 検索で「全世界」「インデックス」「低コスト」などと入力
    • つみたて設定を開き、毎月の金額と買付日を指定
    • NISA枠で買う」にチェック

    ステップ3|お金の流れを自動化

    • 毎月1万円を給料日後に自動入金
    • ボーナス月は+5,000円など少額増額もアリ
    • 年1回、アプリで“ほったらかしチェック”(後述)

    参考リンク(公式)

    # 内部リンク(関連記事) – 固定費の土台づくり:固定費5つの見直しチェックリスト

    固定費5つの見直しチェックリスト|スマホ・保険・電気ガス・サブスク・銀行

  • 固定費5つの見直しチェックリスト|スマホ・保険・電気ガス・サブスク・銀行

    固定費見直しチェックリスト|介護×お金ラボ


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    介護福祉士・FPのNobuです。

    介護職はやりがいが大きい一方で、給与はなかなか増えず、物価高で家計は厳しくなりがちです。

    まず最初に取り組むべきは「固定費の見直し」です。
    毎月の支出を下げることができれば、無理なく将来の資産形成に回せます。

    次に考えるべきは「どの固定費から優先して下げるか」です。
    本記事では、スマホ・保険・電気・ガス・サブスク・銀行の5分野を順番にチェックするだけで、月1万円以上の節約を実現できる方法を紹介します。


    ① スマホ・通信(原則:大手→格安SIM)

    たとえば、大手キャリアのまま利用していると、月々7,000円〜1万円の通信費がかかることがあります。
    しかし、ワイモバイルや楽天モバイルといった格安SIMに乗り換えれば、月3,000円前後に抑えることが可能です。

    さらに、自宅のWi-Fiをポイ活のキャッシュバックや乗り換え特典で実質無料にできれば、スマホのギガ容量を少なくして、通信費を最小化できます。


    ② 保険(原則:医療・がん不要、公的制度を活用)

    日本の公的医療保険制度は非常に充実しています。
    そのため、高額療養費制度や傷病手当金を理解しておけば、医療費負担の多くは制度でカバー可能です。

    つまり、医療保険やがん保険は原則として不要です。
    一方で、夫婦で子どもがいる場合には「収入保障保険」を必要最小限だけ検討しましょう。これは、世帯主に万一のことがあった場合に収入を補う役割を果たします。

    結論として、保険は「守る」役割に限定し、増やす役割は投資で行うべきです。


    ③ 自動車保険(守るべき補償)

    自動車を利用する方にとって、対人・対物の賠償は必須です。
    損害額が大きくなる可能性があるため、ここはケチらないようにしましょう。
    また、人身傷害・弁護士費用特約・無保険車傷害もつけておくと安心です。


    ④ 電気・ガス(自由化で比較)

    次に見直したいのが電気・ガス代です。
    検針票を1年分確認し、契約している単価と新しいプランの単価を比較しましょう。
    さらに、セット割やポイント還元を活用すれば、毎月1,000円〜2,000円程度の節約につながります。


    ⑤ サブスク(使用頻度で仕分け)

    サブスクは「毎週使う/月1〜2回/ほぼ使わない」で仕分けしましょう。
    たとえば、ほとんど使わない動画配信サービスは解約し、必要な時だけ月払いで再契約すれば十分です。

    最後に、家族で利用しているものは共有プランに集約するとさらにお得です。


    ⑥ 銀行・ATM・クレカ(手数料ゼロへ)

    銀行手数料は小さな金額でも積み重なると大きな差になります。
    そのため、無料条件のあるネット銀行を利用し、振込・ATMの手数料をゼロにしましょう。
    また、クレカ払いを一本化してポイント還元も最適化します。


    まとめ:浮いたお金は新NISAへ

    ここまで紹介した5分野を見直せば、月1万円前後の固定費を下げられます。
    その結果、生活防衛資金を確保した上で、浮いたお金を新NISAのつみたて投資枠に回すことができます。

    つまり、保険は「守る」、投資は「増やす」という役割分担が明確になります。
    結論として、無理な節約ではなく、仕組みで家計を整えることこそが、未来の安心につながるのです。


    FAQ(よくある質問)

    Q1. 格安SIMは通信速度が遅くなりませんか?
    A. 一方で、格安SIMの中には昼や夕方に速度が低下する事業者もあります。しかし、ワイモバイルなどのサブブランドは比較的安定しています。

    Q2. 医療保険やがん保険を本当にやめても大丈夫ですか?
    A. まずは公的制度を理解しましょう。そのため、多くのケースで民間保険は不要です。ただし、扶養家族がいる場合は収入保障保険を検討しましょう。

    Q3. 個人年金より新NISAが良い理由は?
    A. 個人年金は利率が低く、インフレに弱いのが現実です。つまり、長期でお金を増やす目的には新NISAが有利です。









    次に読む

    • 固定費の考え方を体系的に:介護職の家計を月1万円浮かす完全ガイド
    • 投資の第一歩:つみたてNISA入門(月1万円でOK)
    • 運営者情報:自己紹介(/about/)

    免責

    本記事は一般的な情報提供です。加入条件や制度は変更されることがあります。最新情報は公的機関・加入先の公式情報をご確認ください。

    参考リンク(公式)